ホールやレッスン室のピアノについて

ピアノのコンディションとは一体どういうタイプが一番いいのでしょうか?

調律師から言わせれば、どの調律師も大体「音がよく出る、弾きやすい、軽いピアノがベスト」というのが普通です。

もちろんそこにはダイナミクス(強弱)がつけやすい、コントロールがつけやすいピアノ、という意味も含まれていると思います。

ただ、こういうピアノのコンディションが市場では多いかというと実際は違うと思います。

例えばホールだと、音が出にくいピアノに意外と出くわすことがよくあります。

ただ、正直を言うと・・・

これはホールの音響効果と、ピアノのコンディションの悪さが要因かと。

通常は音響効果の良いホール、そして抜群の整備がなされたピアノだと、もう本当にコントロールが厳しいぐらい、よく音が出ます。

私は若い頃、よくコンクールなどでいろんなホールで弾いたのですが、そのほとんどは都心の非常にお金をかけた一流の高級な(?)ホールがほとんどだったのですが、まさにどこのホールも本当にピアノが音がよく出て、弾いているとみんなffになりがちで困ることが多くありました。

逆に田舎の古いホールだと、実は音が全然出ないということはよくあります。

これはホールの音響が悪い、ということもありますがさらに輪をかけて(?)ピアノの年間整備費の予算が乏しくて、結局ピアノも音が出ない状態ということがよくあるのです。

とにかく、私は若い頃の苦い経験上から、それ以降、自分のピアノはホールのように音がよく出る状態にセッティングするようにしています。

実際、よく音が出るようにしておくと、無理な力を使わずに済むので、筋肉痛や故障になりにくいです。

また、これが一番重要なのですが、普段から音がよく出る=敏感なピアノで練習しておくと、自分のテクニックが敏感志向になるので、同じく敏感なピアノに遭遇しても驚かないですし、鈍感なピアノ(音が出ない)に遭遇しても対応がしやすいということにつながりやすいです。

もっとも、究極に全く音が出ないピアノというのは困ったもので、そういう場合のためにも、普段音の出ないピアノで腕を鍛えておくという発想もあるのですが・・・。

しかし、やはりそういうやり方は故障も含めて失敗の率が高いと思います。

なので私のレッスン室のピアノはよく音が出る、また鍵盤の動きがスムーズな鍵盤が軽いセッティングとなっています。

ここがどうやら生徒たちには不評なようで(笑)

つまり自宅のピアノは音が出なくて、鈍感な重いセッティングが多いようで、私のところに来ると弾きにくくて困ってしまうようです。

そもそもピアノメーカーは万人向けにピアノを乱暴に弾いても音が荒くならないように、出荷状態の時から、音が出ない状態にしておくことが多いのですが・・・。

ただですねえ・・・

私は結論としては音が出るセッティングにしておいた方がいいと思いますよ。

最先端のホール、ピアノであればある程、音は出る方向性なので、それに自分を合わせた方が良いに越したことはないです。

それともう一つ。

ピアノ演奏というのはどこで差がつくかというと、ダイナミクスの差なんです。

ppp~fffの差がどこまであるか?

そういう意味では逆に pppを操ることが非常に多くなるのですが、普段からpppを出せる技術がないと、本番でまったくpすらできずに全体的にfが多い状態になることもしばしばです。

一昔前は、ホールの音響が悪いからなのでしょうか?それに合わせてレッスン室のピアノも全く音が出ない先生の教室も多かった気がします。

現代では多分年齢層の高い先生だとそういう傾向はまだ残っているように思われます。

実際、現役で演奏活動をやっている先生なら、多分にどの人のピアノも軽くて音量が出るセッティングだと思うのですが。

逆に・・・ちょっと面白い傾向なのですが・・・

多分に●ワイは音が出ないような傾向にしたがるような気がします。

まあ逆に言えば力を入れて弾く方が弾いている実感がする、ということなのしれませんが・・・。

その方が弾きやすい、というのならそれでもいいのかもしれませんが・・・しかし、一流のホールはそうではない傾向なのだから、それってどうなのかなあ?と思うことはあります。

また、面白いことに・・・●ワイの国際コンクールなどで使用していた特別仕様のフルコンに触れたことがあったのですが・・・これがまた●ワイらしくない、異常に音がギラギラよく出るピアノだったのです。

結局このメーカーはどっちのピアノのタイプを売りたいのだろう?と思ったことがありました。

まあ、あくまでも余談ですが。

ピアノは音が出る方が良い?それとも出ない方が良い?

この辺り、論議になるかもしれませんね。

ただ、だいたい演奏活動もやっている人達は音量が出るタイプがほとんどだとは思うのですが・・・。