読譜力と暗譜力について

多分このテーマって子供も大人も結構関心があるのではないかなと。

読譜力については子供の指導において問題になることが多いですね。

初歩段階でいかに楽譜を読むことを習慣とさせるか?

大概、子供は読譜を嫌がります。

そりゃそうです。誰だって譜読みは面倒臭い。

私だって、難易度の高い真っ黒な楽譜を見たら、流石に嫌になってしまう。

ただ、その読譜を初歩段階の子供が嫌がってしまったら・・・もう完璧にピアノの習得ができません。

まあここで指導者はなんとか読譜力をつけさせることに専念するんですが・・・。

このあたり、実は、問題を抱える子供の生徒と揉めることが多いです(笑)

子供だからわかんないんですよ。覚えりゃ弾けるじゃん!何が悪いわけ?・・・と(笑)

ただまあ・・・そこまで言うなら・・・仕方がない。

「音を全部覚えて弾いていいよ」と、こちらが折れることもあります。

でも音が所々間違っているんですがね(汗)

世の中、時々、子供の主張とか、権利を守れとかいう風潮が、こういう時にまで出てくることがあります。

教育ってこれでいいのかな?と思う時もありますが(汗)

しかしそれで果たして・・・いずれレベルアップして・・・

ラヴェル「オンディーヌ」

こーんな音符を全部CDで聞いて覚えられるのかね?(笑)

耳で覚えられたら・・・多分クラシック界で革命が起こるでしょう。

もはや楽譜なんていらない!・・・と。

ただまあ・・・その楽譜が読めない原因、責任は子供じゃなくてですねえ・・・私のところに来る前の指導者や指導機関なんですよ。

まあその辺りはあえて突っ込みませんが・・・。

だから、前にも述べましたが真っ白な、なんでも受け入れる状態というのは非常に危機感がある状態なんですよ。

一方、読譜という問題が解決した生徒はどんな時でも楽譜ばかりじっと見ていて、手を見ないですよね。

なのでお子さんがもし、暗譜もしていないのに手ばかり見ているようだったら、かなり危険性があると思って下さい。

これは嘘じゃない。脅しです(笑)

まあそれである程度の読譜力、ソルフェージュ力がついたら、この問題はクリアです。

難しいようで、とても簡単です。

手順を間違えなければ・・・。

あ、あと本人自身の練習量もありますが(汗)

しかし、ようやく読譜力がついたかと思えば・・・汗。

今度は・・・暗譜という厄介な問題が出てきます。

おかしなことに、せっかく「音を覚えることはやめなさい!」と子供の頃指導したはずなのに・・・

今度は大人になって「音を覚えなさい!」

と、太古、先祖返りをするわけです(笑)

しかし、この暗譜と言うのは大人にとって非常に悩ましい問題です。

上級学習者なら、よくわかるはずです。

そう、暗譜ほど怖いものはない。

果たして完璧な「暗譜」とは存在するのか?

はい、私がここで明言します。

完璧な暗譜は・・・人間100%不可能です。

できるのはパソコンだけ!。

所詮人間の脳なんてその程度のレベルです。

そんなことはない!私は曲を絶対暗譜している!・・・という人はいるかもしれない。

でも現実は・・・違います。

では例えば、あなたは今弾いている曲をいきなり、インテンポで短2度、長3度上の調でミスなく弾けますか?

もし本当にスムーズに弾けたのなら、それは確かに完璧に暗譜しているとは思いますが・・・。

いや、バイエルとかは、無しですよ(笑)

簡単なブルグミューラーの曲でもなんとかなるかもしれない。

私が言っているのはショパンバラードとか、ラヴェル鏡とか・・・。

そういうレベルです。

昔、なんでもブラームスが自作のコンチェルトを演奏する直前のリハで、なんと、楽譜が、管楽器の調と(多分B管とかF管のことなのでしょうか?)ピアノの楽譜の調と、合わせることを間違ってしまって、自分の楽譜が2度低い状態だったので本番でいきなりぶっつけ本番で2度上げて完璧に弾いたという逸話があります。

しかし、これは都市伝説の可能性があります。

実際は作曲家でも厳しいのでは?と思っています。

もちろん、事実はわかりませんが、現代ではどんな巨匠でも多分、完璧な暗譜はしていない可能性があります。

なぜなら・・・

巨匠も歳を取ると、楽譜を見ながら演奏する人が出てきます。

これは多分に歳のせいで暗譜が怪しくなってきたのだからと思います。

では若い頃は完璧に暗譜していたのでは?

・・・いや、違うと思います。

以前、あるピアニストが後半でショパンプログラムを弾きました。

はっきり言って、後半プログラムは有名な大曲ばかりでしたが、音ミス一つもない演奏でした。

ところが・・・実は前半は珍しくもマズルカを10曲ばかり弾きました。

弾く前に本人が「実はこのマズルカの曲目は舞台では初めて弾きます」と言っていました。

しかし、・・・正直言って危なっかしい演奏でした。

要するに、暗譜が不確かだったのです。

もちろん周りの人たちは気がついていなかったと思います。

それぐらい微々たるミスか、音のブレでした。

しかし私はその全てを弾いてきた曲だったので、あちこち、危なっかしかったのがわかったのです。

どんなプロでもなんども弾いている手馴れた曲は完璧だけど、あまり弾いていない曲は暗譜は不確かだった。

そういうことだと思います。

果たして練習不足だったのか?

いや・・・プロに限ってそれはないでしょう。

ここからは予想ですが・・・

なんども舞台で弾いている有名な大曲は、もう何千回、何万回も弾いているので(これは大げさではない)、自動演奏(オートパイロット)状態が実は部分的に存在していたのではと。

もちろんほとんどの部分は暗譜しています。

しかし、そうでなく、自動演奏状態もわずかでもあったはずです。

それが、歳を取ると、体の記憶力などの問題で、自動演奏ですら危なっかしくなる。

そこでだんだんと、楽譜を見始める巨匠が出始める。

私はそう考えています。

自分でも完璧に覚えているようで、全てではないことはよくあります。

それぐらい暗譜というものは厳しいものです。

たかだか1〜2曲や、30分程度ならばなんとかなるのですが、これが1時間半や、コンクールとかとなると・・・。

プロのピアニストはこの辺りのために膨大な練習時間を割いていることに間違いはないと思います。

まあここから見ても・・・

指導より演奏の方がよっぽど大変で神経が消耗します(笑)

ただ、だからと言って暗譜を諦めてはいけません。

私から見たピアノ学習者のほとんどは暗譜に本気で挑んではいません。

よく大人の生徒で「子供の頃は暗譜が完璧にできたのに大人(20〜30代)になったら、記憶力が衰えてできなくなりました」

と、聞きますが・・・そりゃ違いますよ(笑)

それは単にあなたが全てを自動演奏で弾くには危険すぎる、難しい曲を弾き始めたからです。

子供だって、ソナタレベル以上の曲になればみんな危なっかしいって(汗)

逆に言えば・・・

小さい子供はそのほとんどが全範囲100%精巧な自動演奏マシーンです(笑)

現場の私はよく知っている(笑+汗)

だから、そういう言い訳はよしなさいって。

どちらにしても、どこまでいっても、自動演奏という部分は捨てきれずに、ありますが、それは究極に減らして、ほぼ完璧な暗譜を目指すべきだし、目指せるはずです。

曲の細部、構成、流れを完璧に覚えて、五線紙に書こうと思えば書けるぐらいの状態にする。

これは逃げずに挑戦するべきです。

そして、それでも、どうしても暗譜できない部分が時々生じる。

そのほんのわずかな部分のみ・・・初めて自動演奏に頼ってみる。

ただし・・・自動演奏に頼れば必ず、本番で危ない目に会います。

どこまでいってもピアニストは暗譜と一生戦っていかなければいけません。

別にピアノ道を今回書く気はなかったのですが(笑)

なぜか、そういう流れに(笑)

一方で暗譜なんて必要なのか?という論議もあるかと思います。

意見は分かれるかもしれませんが・・・

私は圧倒的に、暗譜肯定派です。

たとえ一部分で自動演奏を使ってでもです。

なぜなら、楽譜を見ながらの演奏はやはり演奏に集中できそうにない。

まあこの辺りはいろんな意見があるでしょうね。

しかし、楽譜肯定派はそれを暗譜から逃げる口実に利用しないように!!